Se connecter第五週四日目――快楽市場にて。
開場を示す五回の鐘がティッカーコード:RENA-09
隷嬢ランク:2 属性:処女 隷価始値:20JWL/org快楽市場が開場する前、注文を確定しようと空売り勢が一斉に仕掛けた。
「予定通りだ」「ショート積めるだけ積め」「新人銘柄はここで崩れる」「新人銘柄は崩れてからが美味しいんだ」「もっと積め。レバレッジかけろ」 小口のトレーダーたちが笑いながら、注文していく。 開場した瞬間に、一気に隷価が下落する。第五週四日目――快楽市場にて。 開場を示す五回の鐘が亡都に鳴り響くほんの少し前。 小口のトレーダーたちは、ノート型、スマートフォン型の端末を操作して、取引記録を確認していた。 自分たちの玩具であるRENA-09の取引再開を心待ちにしていた。 取引休止によるペナルティは隷価-20%だ。 それを手ごろ感が出たと思うか、さらに売りが進むか、それは銘柄次第である。 ティッカーコード:RENA-09 隷嬢ランク:2 属性:処女 隷価始値:20JWL/org 快楽市場が開場する前、注文を確定しようと空売り勢が一斉に仕掛けた。「予定通りだ」「ショート積めるだけ積め」「新人銘柄はここで崩れる」「新人銘柄は崩れてからが美味しいんだ」「もっと積め。レバレッジかけろ」 小口のトレーダーたちが笑いながら、注文していく。 開場した瞬間に、一気に隷価が下落する。 それを心待ちにしていた。 大量の売り注文の中に、買い注文が混ざる。 それをショートポジションのトレーダーたちが笑う。「買え買え。それが俺らの肥やしになる」「金を吐き出させろ」「もっと、もっと買え」 出来高が急増し、開場前にもかかわらず異様な雰囲気を醸し出していた。 快楽市場開場直前――、端末の情報が更新された。 注文を確定して、一息ついたトレーダーが興味なさそうに、状態を確認した。「ってッ! 本気かッ!」 ティッカーコード:RENA-09 アニムスランク指名権を選択「最高だッ! 完全に売り確定だ」「疑似妊娠確率の低いDだな」「取引再開後だ。どの銘柄だってリスクは取らないだろう」 トレーダーたちがさらに追い打ちをかけるように、売り注文を入れようとした、その時。「……おい」 ティッカーコード:RENA-09 アニムスランク指名:B
第二章 第六話 壊れた賭け 第五週四日目――。 玲奈に異変が起こったのは取引休止から七日目の朝だった。 アニムスの子を孕んでから、一週間。 早朝の静かな部屋に、玖段の投影する文字と数字が壁に浮かび上がっていた。 玲奈の身体は一糸まとわず、布団がかけられていた。 意識がなく、昏々と眠り続けている。 玲奈とは反対に、玖段は淡々とレポートを表示していく。<胎体サイズ……5.4ミリメートル><出産開始……>「……んん……」 玲奈の身体がびくりと震える。 意識がないのにもかかわらず、苦しそうにうめく。<RENA-09から胎体が切り離し……成功>「んあッ……」 玲奈の腰がわずかに浮き、ベッドシーツがきしむ。 手でベッドシーツを握りしめる。<出産完了>「んは……ぁ……ッ」 苦しみから解放されたためか、喘ぎ声のような声を出し涙をツゥっと一筋零した。 しばらくすると玲奈の膣口から、黄色いゼリー状のものがニュルリと押し出された。 それはスライムのように柔らかく、半透明の塊となって床に落ちる。 ぬるり、と脈打つように動きながら、ベッド脇の隙間を伝って部屋の外へと滑っていく。 それが消えてしばらくすると、玲奈が荒い呼吸を繰り返したあと、ゆっくりと上体を起こした。<Yes。RENA-09。気分はどうですか?> 掛け布団で乳房を隠しつつ、額に指を当てる。 玲奈は、ぼんやりと玖段が文字を浮かべている壁を見つめる。 髪の毛を右手で撫でつけると、脳が再起動を始めた。「……人生で最悪の目覚めよ……」 自分が
第四週五日目朝――、快楽市場が開場を示す五回の鐘が亡都に鳴り響いた。 開場とともに、チッカーが文字と数字の光を灯す。 ティッカーコード、Pエネルギーの生産量、昨日の隷価終値などが描かれる。 だが、それらは取引可能な銘柄である。 取引休止になると、赤いバツ印がつけられ一目瞭然となる。 ティッカーコード:RENA-09 隷嬢ランク:2 属性:処女 快楽指数:――(疑似妊娠のため取引休止) Pエネルギー生産量:――(疑似妊娠のため取引休止)◇◇◇ 取引休止のリストを見ると、快楽市場にいるトレーダーたちが騒めいた。 疑似妊娠や快楽失神による取引休止は、珍しくもない。 だが、新人銘柄であるRENA-09が取引休止となると――。「RENA-09……、珍しいな。まだ四週だろう?」「相手はDランクアニムス。疑似妊娠確率0.5%に入ったか」 トレーダーは可哀そうなモノを見るように、呟いた。「運が悪かったな」「もったいないな――。市場の玩具から銘柄になりそうなタイミングだったのにな」「ああ……、この銘柄は終わったな。どうするかな」 新人銘柄は小口の投資家たちの絶好の玩具だ。 隷価をわざと乱高下させ、隷嬢が所属するエネルギープラント企業の反応を見るのだ。 大体は無反応であるが。 それを越えて、ようやく取引できる銘柄となる。 このトレーダーたちが、小口の投資家たちが引いたあとから、銘柄として値を付けるのだ。 そこまで至らないと判断した、トレーダーたちはチッカーや自分の端末を見て、好き勝手な言葉を並べる。「取引休止のペナルティは、再開後の始値-20%ダウンだろう? 隷価25JWL/orgだとしても、20JWL/orgになる。大分痛いな」「引きが悪ければ、Dランクでさらに生産量もダウン……。悪い材料しかない。
第四週四日目朝――快楽市場開場前。 玲奈はエネルギープラント――Pエネルギーを産みだすセックスをするホテルに、全裸でベッドの上に座っていた。 シャワーを浴びて埃を落とし、身体は綺麗にした。 だが、心は浮かない。 ――アニマと戦闘をしても、隷嬢としての役割は変わらないわ。――隷嬢として求められているのは、Pエネルギーを生み出すこと。 玲奈が視線をベッドに向けると、白いシーツがかかっている。 どれだけ汚してもいい。 むしろ汚しただけ、価値が生まれる。 そう言わんばかりだ。 はぁっとため息を一つ吐いて、髪の毛を撫でる。 ローションや潤滑ゼリーがベッド脇に置かれていて、それを生々しく思い出させる。「来る日も来る日もセックス、セックス。生で膣内射精とか、どうかしているわ」 だが、それをしなければ、玲奈は金が手に入らない。 壁には光の文字が投影されて、自分の隷価とPエネルギー産出量、快楽指数などが表示され、リアルタイムで変化していく。 いつもと同じ、Pエネルギー生産現場だ。 快楽を感じ、それに堕ちる。 それも今では、隷嬢として生きる玲奈の日常の一部となっていた。 「……最悪」 金のために自分が、知らない男――いや、化け物に股を開き、喘ぐ。 女子高生だった自分なら、きっと軽蔑していただろう。――慣れたわけじゃないんだけどね。 隷嬢として生きるために、割り切った部分だ。 身体を売る――、自分への嫌悪感で吐き気がした。 その感情を、脳内に作った禁断の箱へ、押し込んだ。「気持ち悪い……」――自分も、世界も。 玲奈の瞳の奥に闇が宿る。――後悔も、嫌悪感も今は押しのけて。――わたしの生と性を賭けて……。
第二章 第三話 弱者の理 第四週一日目、夕方――快楽市場閉場後。 玲奈はエネルギープラント区画――ホテルとホテルの隙間の道を歩く。 エネルギープラントはバロック調であり、玲奈の服装はゴシックロリータ風のコルセットドレス――黒を基調として銀があしらわれている――で、異世界の姫にも似た姿と、妙に調和している。 日が出ている時間だが、それもしばらくすると赤に染まり、雰囲気が一変する。「逢魔が時、とはよく言ったものね」 玲奈はそう感想を漏らすと、天を仰いだ。 ある意味で、圧倒される光景だ。 ホテルから縦横無尽に配管が、入り乱れているのだ。「悪く言えば、エネルギープラント工場。良く言えば人工の迷宮ね」 隷嬢がアニムスとセックスすることで得た、Pエネルギーを濾過、抽出する施設へ送る為の配管である。 配管は一室一室から飛び出て、路地裏を通っている。 そこに飛び乗ることができるほど巨大なそれ。 日本ではないと、玲奈に感じさせる。「…………」 再び前に視線を戻し、少しだけ目を瞑る。<Yes。取り出したPエネルギーは快楽だけではなく、憎悪や絶望も混じっています。それらを濾過して、加工してから資源になります。隷嬢の憎悪や絶望から、生まれたのがアニマです> アニマは隷嬢を襲う。 産んだことを憎悪しているのか、あるいは、隷嬢の中に戻ろうとしているのか? それは玲奈にはわからない。「昼と夜が混じる時間のように、快楽と憎悪が混じっている……。隷嬢とアニマもここで混じるわね」 魔は立場によって異なる。 隷嬢もアニマも。――いえ、快楽市場が一番の『魔』かもしれないわね。 隷嬢、アニマ。 それを生み出して、金を取引する快楽市場。「狂っているのは誰かしら?」 隷嬢を生み出したこのシステムか? 隷嬢のPエネルギーから生み出されたアニマか?
第三週七日目夜――、快楽市場閉場後。 快楽市場で勝ったものは喜びで、負けたものは誰かに慰めてもらうため、街を徘徊する。 そんな勝者と敗者が入り混じる亡都歓楽街の一角に、バーがあった。 入り口は一つしかないそのバーは地下にあった。 ドアを開けて入れば、鈴の音が鳴り響く。 薄暗く、しかし調度に品のある室内。 磨かれたカウンターに酒瓶の並ぶ棚。 邪魔しない程度に流れる、ゆったりとした音楽。 紫煙とアルコールの匂い。 金に余裕のある男性が、ドレスを纏った女性――キャストを侍らせ、酒を飲む。 金で女性との会話を楽しむ、そんな場所だ。 そんな雰囲気を持つバーであるものの、入店した瞬間に違和感を生じるだろう。 壁に掛けられたモニター、壁面に投影された光で作られた文字と数字。 映像は変化し、文字と数字を変化させる。 その数字と文字は、見るものが見ればすぐに分かる。 快楽市場のティッカーコード、隷価の推移、快楽指数の変動。 Pエネルギー生産量、純度などだ。 快楽市場と異なるのは、閉場しているため取引結果を示している、ということだ。◇◇◇ 取引結果だけを映しているのであれば、トレーダーが集まり酒を嗜むバーでしかない。 そのモニターが映す数字はそれだけではなかった。 快楽市場では値動きと配当が語られる。 さらにここでは、隷嬢のより踏み込んだデータが表示されていた。 隷嬢の精神状態、アニムスランクによる疑似妊娠確率、快楽指数とPエネルギー残量……。 精神状態が悪ければ、疑似妊娠確率が高ければ、Pエネルギー残量が少なければ――、良好と判断され、取引が活発になる。 そう――、バーの形を借りたここは快楽市場とは異なる地下証券取引所だ。 快楽市場の銘柄が取引休止、あるいは取引停止に至るかどうかでマネーゲームを行う。 隷嬢の価値が下がる、あるいは消失する瞬